緑滴る山々、谷を吹き渡る風、豊かな水― 兵庫県北部・但馬地方で生産される「但馬牛」は世界一の牛肉″と賞賛される。700年もの昔から家族同然に育まれてきた但馬牛は、日本各地の銘柄牛の素となり、神戸ビーフという別称でも世界に愛されている。そんな但馬の仔牛を「一頭飼い」で慈しむように育てる三田市の牛飼い名人・仲義之さんを訪ねた。
「牛を上手に育てるコツはなあ、ストレスや嫌な心持ちを味わわせないこと」―全国各地の品評会で勝ちとったトロフィーの数々と、賞状に囲まれて仲義之さんはこう笑う。木枠の牛舎には「一頭一頭の血統書の横に花が飾られ、炎暑の夏には扇風機で風が送られる。飲み水はミネラル豊富な井戸水だ。牛の巨体にブラシをかけてやると、日を細めた牝牛は仲さんに身を預けんばかりだ。「趣味と実益ですわ」。こういいながら仲さんが、牛舎に入ると、牛たちが首を伸ばしてペろペろと仲さんの足を舐め始めた。
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